ひとくちコラム vol.23

ベニスの舟歌 嬰へ短調 Op.30-6 | 紡ぎ歌 Op.67-4(無言歌集より)/メンデルスゾーン

収載巻:レパートリーコレクションズⅢ

PSTA指導スタッフ 渚 智佳

フェリックス・メンデルスゾーンは、1809年、ユダヤ人家系に生まれました。祖父のモーゼスはドイツのソクラテスと呼ばれた哲学者で、ユダヤ人解放に尽力しました。父親のアブラハムは銀行家として富を築き、幼い子どもたちに様々な教育を施しました。フェリックスは、音楽だけでなく、各国語に通じ、絵画や文章の分野でも並々ならぬ才能を発揮します。

無言歌集は、彼の生涯にわたって作曲され、6曲ずつの全8集から成っています。
この時代、ブルジョアジーの家庭やサロンにもピアノが普及し、気軽に楽しめるような小品が好まれ、1832年に無言歌の第1集が出版されるとたちまち人気を博しました。
各曲には素敵な題名が付いていますが、メンデルスゾーン自身がつけた題名はごくわずかで、ほとんどは出版者などによって付けられたものです。メンデルスゾーンは、標題によって音楽のイメージが固定化されることを嫌っていたようです。
彼はこのように述べています。
「人は、音楽は曖昧だとこぼすが、言葉は理解する。しかし、私にしてみれば全く逆で、言葉は真に優れた音楽に比べれば曖昧で漠然としていて難解である。真に優れた音楽は言葉よりも幾多のもので魂を満たしてくれる。私の愛する音楽は不明確で言葉に出来ないのではなく、反対に明確過ぎるのだ。もし、私の楽想が何であるかと問われるなら、それは歌そのものだと答えよう。」

「ベニスの舟歌」は彼自身が付けた題名で(全曲集の中で同名の曲が3曲あります)、たゆたう伴奏に乗って哀愁を帯びたゴンドラ漕ぎの歌が聞こえてきます。
「紡ぎ歌」は、楽譜中の発想語に由来していますが、他にも「蜜蜂の結婚」という題名もあります(冒頭の半音で回転するような音形は、蜂の飛び回る羽音を想像させますね)。
前者はシンプルかつ伸びやかな歌、後者は軽やかに目まぐるしく動き飛翔するパッセージと、メンデルスゾーンのピアノ音楽の独得な響きを体感できる2曲と言えるでしょう。

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