ひとくちコラム vol.11

エリーゼのために WoO 59/ベートーヴェン

収載巻:レパートリーコレクションズⅢ

PSTA指導スタッフ 手塚 真人

私が愛してやまないベートーヴェンのピアノ音楽。
可愛らしいソナチネから、至高の作品といってもいい最後の3つのソナタまで、論理的かつ緻密に書かれた彼の作品に触れる度に私の心は深い感動に包まれます。

さて、今回は天才ベートーヴェンのあまり知られてない恋愛に関する逸話をお伝えしたいと思います。
彼は生涯独身で過ごしましたが決してモテなかったわけではなく、何人もの女性と恋をし、独身貴族を謳歌していたようです。数多く残っている恋愛話の中で、彼の作風からは考えにくい、切なく、ちょっぴり笑えるエピソードを1つご紹介しましょう。

彼が40才位の時、ウィーンで知り合った22才年下のテレーゼ・フォン・マルファッティに恋をし、求婚します。
もともと2人の身分が違い、成就する可能性の少ない恋だったのですが、驚くことにベートーヴェンはボン在住の友人ヴェーゲラーに「早急に洗礼証明書を送ってほしい!」と手紙を書いています。
これは当時結婚するために必要な書類。相手の反応も返事も待たず、周りの状況も判断せず、自分勝手に結婚の準備を始めてしまう。
さらにそれと並行し彼女へ「エリーゼのために(テレーゼのために?)」を作曲し、渡してしまったベートーヴェン…。そして当然のごとく、直後大失恋に見舞われます。

このあまりに感情的、感覚的な彼の一面も私は大好きです。こんなベートーヴェンの側面を知ることも、彼の作品を演奏する際何かの役に立つかと思い紹介させて頂きました。
22才年下の愛するテレーゼへの激しい情熱を押し殺し、曲中たった2箇所、それもピアニッシモだけを書いた彼の想い。静かに、深く愛を語ろうとするベートーヴェンの気持ちを想像しながら弾いてみてはいかがでしょうか。

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