アーティストインタビュー “大崎 結真”

音楽好き、という気持ちがすべての基本なんですね。

ピアニスト 大崎 結真 インタビュー

1981年、茨城県生まれ。2000年、東京芸術大学附属音楽高等学校卒業後イモラ音楽院入学。さらに、パリ国立高等音楽院大学院に入学、03年修了。浜松、ロン=ティボー、ルービンシュタイン、ジュネーブ、リーズ等、数々の国際ピアノコンクールに入賞。第15回ショパン国際ピアノコンクール」(05年、ファイナリスト賞)では、実力伯仲の中、予選時から注目と賞賛を浴び、内外のメディアで高く評価された。87年、6歳でN響団友オーケストラと共演。以降、東京交響楽団、オーケストラ・アンサンブル金沢、仙台フィルハーモニー管弦楽団、読売日本交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、フランス国立管弦楽団、ポーランド国立放送交響楽団などオーケストラとの共演も多く、才知溢れるピアニストとして、世界的に注目を集めている。これまでに藤原亜津子、大畑知子、金子勝子、播本三恵子、中村紘子、フランコ・スカラ、ジャック・ルヴィエの各氏に師事。(現在パリ在住)

視覚的にも表現をお伝えしたかった

数々の国際コンクールに入賞を果たし、パリを拠点に活躍している大崎結真さんが、PSTAのオンデマンド講座に登場した。PSTA(piano-study teachers' association)は、ピアノの先生を応援するために生まれたサポートシステム。ヤマハが長年にわたって培ってきたさまざまなノウハウを提供するもの。個人でピアノ教師をしている人も、「指導法伝達講座」「グレード試験官認定講座」を受講することでPSTAの指導者になれる。

オンデマンド講座は、PSTAの新しい講座のひとつ。大崎さんはピアノ演奏で出演した。

「私のような若いピアニストを紹介して頂ける機会を頂き、嬉しく思っています。
今回のように演奏している姿も見ていただくことは、少し気恥ずかしいのですが、自分の思いをより明確にお伝えできるのではないかと思いました。」

スタジオでの収録は、初めての経験だった。

「収録後、すぐにテイクを見聞きすることで、自分を客観的に見る事ができて、 勉強になりました。自分が思ったように表現できていないところを沢山発見してしまい、最初から弾き直ししたくなりました。まだまだ未熟な自分を痛感しました。聴衆のいないスタジオでの演奏なので、テンションが上がらなかったらどうしょうと心配でしたが、スタッフの皆さん皆良い人でしたので、私は演奏に集中することができました。」

2月にモーツァルトのピアノソナタ第11番「トルコ行進曲付き」とリストの「ダンテを読んで」が流され、3月にはシューベルトのセレナーデ(リスト編曲)とピアノソナタが予定されている。

「トルコ行進曲は、7歳のときテレビのコマーシャルで弾いた思い出の曲なんですよ。昨年は、生誕250年記念の年でもありましたので、この際、全楽章きちんと勉強しょうと思い、取り上げました。ダンテを読んでとセレナーデは初めて取り組んだ作品。
リストのピアノソナタロ短調はリーズやジュネーブ国際コンクールのセミファイナルで演奏しました。今回の選曲は、これまで勉強した曲と、新しい曲にトライして自分に挑戦してみました。」

PSTAオンデマンド音楽講座に大崎さんが出演した模様

自分の中にイメージがなければ、何も表現できない

リストなどテクニカルな作品をこともなく弾いてしまう彼女だが、その手は意外にも小さい。その強靭なテクニックは3歳10ヶ月からスタートしたレッスンの賜物だ。

「テクニックというと、指が回るメカニックと誤解されますが、本当の意味のテクニックとは、自分のイメージする音色や、音楽表現を実現する技術のこと。それはこれまでご指導頂いた先生方もおっしゃっていました。だからまず耳を育てなければならない。そして感性を磨かなければならない。」

金子勝子、中村紘子、フランコ・スカラ、ジャック・ルヴィエら、彼女が師と仰ぐ人は多い。

「金子先生にはレガート奏法を習いました。指を立てて弾かない様に手の甲に10円玉を乗せて感覚を学んだ事もありました。ピアノでレガートを表現できるようになると、表現の幅が格段に広がります。
中村先生には、10歳の時水戸芸術館での公開レッスンでご指導頂いたのが最初です。
シューマンの子供の情景をレッスンして頂いたのですが、奏法や表現など方向性は正しいとおっしゃって下さったので心強く思いました。中村先生には多くのことを教えて頂きました。演奏家としての視点から、会場での演奏効果や、より聴き手にダイレクトに伝えるための心構えなど。特に、先生から頂いた心に残るメッセージがあります。
「演奏家は聴衆と常に一期一会。その一回の出会いに自分の全生命を燃焼させ、聴き手の心に忘れられない「何か」を残さなければならない。」演奏家の使命を教えて頂きました。このメッセージは私のバイブルになっています。スカラ先生には、もっと脱力して弾くように指摘されました。
つい前傾姿勢になって弾いていたのですが、それは自分の演奏を客観的に聴いていない証拠なのです。ルヴィエ先生には今も時々レッスンして頂きますが、フランス人ならではの研ぎ澄まされたバランス感覚を学んでいます」播本先生には、小5から芸高3年まで、大切な時期をご指導頂きました。素晴らしい先生でレッスンして頂いた方はご存知だと思いますが、一度のレッスンで見事に演奏が変わるのです。説得力のあるご指導にはいつも感心していました。」

どの先生にも共通したものがあるという。

「どういう音を出したいのか、自分のイメージがなければピアノを練習する意味がないということ。持っているイメージをどうしたら実現できるのかを考えることが、本当のレッスンなんですよね。また、心の成長なくして良い演奏はありえないと思うので、いろんなことに興味を持って、ボキャブラリーを増やし、自分の言葉で表現することが大事だと思っています。」

大崎さんの手に注目!

大崎さんに、手を見せていただきました。
「あれ?弾いている時よりも小さくみえるような・・・」

黒鍵の間にもすんなり(?)指が入ります。
「そうなんです、実は手はあまり大きくはないんです」

「実際に弾く時は、どんな感じなのでしょうか?」
ピアノに向かって手を開いてみていただきました。

くるっとひっくり返して…手のひらを拝見。
小指から手首にかけて、筋肉がついているのがわかります。

頂上のない山ですが共に登り続けましょう

演奏家としてスタートしたばかりの彼女だから、まだ、後進の指導の経験はないが、いづれは行っていきたいという。

「自分が成長していないと本当のレッスンはできないと思っています。もっと勉強をして自信がもてるようになったら是非そうしたいですね。これまで学んで来た事を後進に伝えていくことはとても素晴らしいことですし、これまで育てて頂いた私の使命だとも思っています。

ピアノを学ぶ人に。

「音楽には到達点や頂点はありません。どんなに勉強しても先が見えないほど、深く、遠い世界。でもそれは絶望的なことではなく、いつまでも飽きることなく深め、高めていくことのできる希望の世界でもあると思うのです。私自身、逆境にあっても前向きに考えて頑張りたいと思っています。一緒に頑張りましょう。」